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22.11.7-12.4 Sword or Soul

2022年11月7日~12月4日にかけて、企画展『Sword or Soul』を開催いたします。

展示作品:太刀 銘 助包(国指定重要文化財)の押形

玉置さんの「日本刀から美しさだけを抽出したい」という思い。

記録、収集としての役割を超えた、美を愛する人の心が見えるような押形をご覧いただきたいと思います。

押形制作者:玉置城二(刀剣研磨師)

 

Profile

京都府在住。1992年 研磨コンクール初出品。

国指定文化財をはじめとする多くの日本刀の研磨、押形の採拓をおこなっている。

「北野天満宮」国指定重要文化財 堀川国広 修復研磨。「柏原美術館」館蔵品修復研磨。「茨城県立歴史館」 一橋徳川家旧蔵「光忠太刀」「浜御殿打薩州正清刀」全身押形採拓。享保名物 大倶利伽羅廣光(重要美術品)全身押形採拓。「建勲神社」 享保名物 義元左文字(国指定重要文化財)全身押形採拓奉納。「豊国神社」 享保名物 骨喰藤四郎(国指定重要文化財)全身押形採拓。太刀 山鳥毛(国宝)全身押形採拓など多数。

2013年NHK大河ドラマ特別展「八重の桜」伝山本覚馬佩刀の研磨(後に覚馬の佩刀ではない事が判明)。松竹/北國新聞共同制作映画「武士の献立」刀剣研磨指導ほか撮影協力もおこなう。

写真 : 中村 慧

太刀 銘-助包(国指定重要文化財)

備前国には鎌倉時代初期から中期にかけて助包同名の刀工が複数おり、そのいずれかに該当すると思われるのがこの助包です。

佩表目釘穴の上部、樋に掛かりながら大振りで力強い二字銘を切っています。

刃文は広直刃調で刃中に多数の働きがあり、地には「段映り」と呼ばれる特徴的な映りが現れています。

刃長 二尺四寸一分二厘|反り 八分三厘

写真 : 中村 慧

押形(おしがた)とは

刀身に和紙をかぶせて、石墨などを使い形状を写しとったものです。

押形の歴史は室町時代から始まったといわれています。この時代においては写生による記録で、美術的意味合いではなく資料として制作されていました。

その後、中国で発案された「拓本(たくほん)」を応用して生まれたのが「刀剣押形」です。より正確に立体物の姿を写し取ることができるようになりました。

刀剣は錆びなどにより破損しやすいといった特徴を持つ上に、戦や火事による焼失や紛失も多かったと考えられます。押形によって、形状や意匠を後世に残すために重要だったと考えられます。

他にも、「銘(めい)」が刻まれた「茎(なかご)」を写し取ることで、制作名、作刀の日付などが記録できるようになり、贋作(がんさく)を見抜くことにも繋がります。

現在では、写真技術の発達により刃文の記録撮影も可能となりました。しかしながら、刀剣を観察する訓練や鑑定眼の鍛錬という観点で評価され続けています。

鑑賞時のお願い

|展示物にお手を触れないようにご注意ください。|展示台の上に物を置かないでください。|展示台にもたれかかったり、上に乗ったりしないでください。|24時間動画撮影、配信中ですのでご了承ください。|土足禁止です。靴を脱いでお入りください。|不審者・不審物を発見されたら通報をお願いします。|

今回の企画展について思うこと

私は、玉置さんの描く押形が、美しさを愛する人の心までも写し取っているように感じます。

物質的価値を超え、多くの精神的価値を持つ日本刀ですが、時によっては人を傷つけうる存在でもあります。

しかし押形は、人を傷つける要素が全くなくなり、ひたすらに美しい姿を見せてくれます。

もしも人が美しさを愛する心をもっともっと育てていくことができれば

物質も精神も越えた、誰の血も流れない世界をつくることができるかもしれません。

なぜ文化を普及していかなくてはいけないのかについて、私たちは改めて考えなくてはいけないと考えています。

以下、ユネスコ憲章の前文です。(日本語訳は文部科学省サイトに掲載)

ユネスコ憲章(The Constitution of UNESCO)

The Governments of the States Parties to this Constitution on behalf of their peoples declare.

That since wars begin in the minds of men, it is in the minds of men that the defences of peace must be constructed.

That ignorance of each other’s ways and lives has been a common cause, throughout the history of mankind, of that suspicion and mistrust between the peoples of the world through which their differences have all too often broken into war.

That the great and terrible war which has now ended was a war made possible by the denial of the democratic principles of the dignity, equality and mutual respect of men, and by the propagation, in their place, through ignorance and prejudice, of the doctrine of the inequality of men and races.

That the wide diffusion of culture, and the education of humanity for justice and liberty and peace are indispensable to the dignity of man and constitute a sacred duty which all the nations must fulfil in a spirit of mutual assistance and concern.

That a peace based exclusively upon the political and economic arrangements of governments would not be a peace which could secure the unanimous, lasting and sincere support of the peoples of the world, and that the peace must therefore be founded, if it is not to fail, upon the intellectual and moral solidarity of mankind.

For these reasons, the States Parties to this Constitution, believing in full and equal opportunities for education for all, in the unrestricted pursuit of objective truth, and in the free exchange of ideas and knowledge, are agreed and determined to develop and to increase the means of communication between their peoples and to employ these means for the purposes of mutual understanding and a truer and more perfect knowledge of each other’s lives.

In consequence whereof they do hereby create the United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization for the purpose of advancing, through the educational and scientific and cultural relations of the peoples of the world, the objectives of international peace and of the common welfare of mankind for which the United Nations Organization was established and which its Charter proclaims.