1つだけ美術館にたどりついた手帳
今回の展示品は、様々な人達が記した手帳や日記、ネタ帳などの「手帳類」を収集されている「手帳類図書室」協力のもと、数冊の手帳(スケッチブック)が展示されます。
その手帳は、とある人物が実際に学生時代に使っていた手帳(スケッチブック)です。
他人に見られることを前提としていない、誰かに見せるためではない、ただ、自分のためだけに書かれた記録。
その中身に、私たちは何を期待して、何を見て、何が感じられるのでしょうか?ぜひ、ゆっくりと手帳をめくり、「他人に語られるはずのなかった、他人の物語」に没頭してみてください。
鑑賞にあたって守っていただきたいこと
さて、今回は実在する方の手帳ということで、以下の禁止事項を設けさせていただいております。
・手帳に傷がつくような行為
・手帳の中身の撮影
・手帳に記載された個人情報へのアクセス
・その他、元の持ち主や関係者への迷惑行為
手帳には、持ち主の生の人生、プライバシー、個人情報が詰まっています。企画継続のため、閲覧にあたっては上記禁止行為の厳守にご協力をお願いします。
引き出しを開けるところから始まる、鑑賞体験
さて、美術館に入っても、今回の展示品である手帳の姿は見えません。そこにあるのは、一台の机です。
皆さんも、ご自身の手帳を机の上などに出しっ放しにしたりしませんよね?机の引き出しや、鞄の中など、どこかしら人目につかないように仕舞われていることと思います。
今回の「展示品である手帳」も、机の引き出しの中にしまわれています。鑑賞者は、まず机の前に座り、まるで自分の机から手帳を取り出すように手に取り、手帳を開きます。
つまり、「自分の手帳を手に取り、開く」というプライベート行為を追体験するのです。
しかし、実際に手にした手帳に書かれてある記録や記憶は、自分のものではない、他人の記録・記憶の断片なのです。そんな行動と感覚の齟齬の先に私たちが感じるもの、それこそが「今回の真の展示品」と言えるような気もします。
SNS全盛の今、他人の生の記録を見る意味
スマホのSNSアプリを開けば、そこには独り言のように吐かれた語りの数々。
それらは、独り言の体をとりながら、そもそもが「発信しよう」「誰かに見てもらおう」という思いのもとに、書かれたもの。そのような語りが、私たちの手の中で、どんどん更新、発信されている時代です。
そんな時代に生きる私たちだからこそ、句読点の一つまでが自分のためだけに書かれた、誰かのアナログな生の記録に触れることには、その意味でも特別な体験になるかと思います。どうか今回の手帳の記録・記憶は、外界の様々な情報と結びつけたりせず、手帳を見つめる今の自分にしっかりと矢印を向けて、その感覚を楽しんでみてください。
展示概要
展示名: だれかの手帳類
期 間: 2024年9月4日から9月30日
協 力: 手帳類図書室 https://techorui.jp/
東京都渋谷区代々木、参宮橋Picaresque(ピカレスク)にある「手帳類図書室」では、人が記した手帳や日記やネタ帳など、あらゆる「手帳類」を収集する志良堂正史のコレクションを読むことができます。ギャラリーの一画で、誰にも見せるつもりじゃなかった手帳類を、1時間1000円からご覧いただけます。手帳類の筆致や筆跡、手触り、音、においなどを、あなたの五感で解釈してみてください。
関連情報
naoki onogawa museum
〒761-4106 香川県小豆郡土庄町字東元浜甲289番地33(MeiPAM 06)
小野川直樹が日本で唯一、常設展示をおこなう美術館です。
小豆島の迷路のように入り組んだ路地の奥にあらわれる真っ白な空間には、
大小9点の作品が展示されています。
小野川がすべて自らの手で折った鶴が織り成す小宇宙は、
おびただしい数の集合体でありながらすべての輪郭がくっきりと光を放っています。
静謐を湛えながらも、そこから溢れ出す「祈り」をぜひ感じとってみてください。
紹介サイト「小豆島旅ナビ」 https://shodoshima.or.jp/sightseeing/detail.php?id=337&c=1
1つだけ美術館は、ご来館いただいたみなさまからのドネーション(寄付)によって運営されるパブリック美術館です。
なにとぞご協力をお願い申し上げます。
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