仮面を使った体験型展示とワークショップ
2024年11月展示「わたしのしらないわたしとであう」では、5つの仮面を使った体験型の展示を行いました。
2024年11月9日、この仮面を使ったワークショップが開催され、ファシリテーターとしてあそび創造集団クロッシング主宰の金川直美さん(通称:なおみん)をお迎えしました。
心を解きほぐすウォーミングアップ
今回のワークショップは「仮面を付ける」その前に、心と体をほぐす「ウォーミングアップ」の時間が設けられました。
声を出すこと、発想すること、それを共有するワークをおこなうことで、心理的安全性の担保を伝えます。
仮面と共に心の物語へ
心と体がほぐれたところで、いよいよ5種類の仮面から1つを選び、WSが始まります。
なおみんも仮面をつけ、参加者と言葉を交わし、同じ仮面の物語を共有していきます。
このとき、なおみんが鞄から取り出したのは様々な大きさ・色彩の布たち。これらは、スカーフやスカートなどのように、「どのように使っても良い」とのこと。
この「布をまとう」目的を、なおみんは端的に「ゾーンに入るためなんです」と答えてくれました。この「ゾーン」という言葉に、今回のWSの、仮面を被ることの本質が隠されているように感じました。
ファシリテーターであるなおみん自身も、仮面を被り、布をまといます。そして、鏡に映る仮面を被った自分を見つめながら「声色」までをも、その仮面の姿に合わせて変えようとしています。なおみんは、この一環の「準備作業」を「チューニング」と表現します。
準備が整うと再びなおみんが、鞄の中から何かを取り出しました。それは、私たち大人にとっては、「懐かしい」と感じる遊び道具たち。紙風船や指人形、誰もが子供の頃に触れたような素朴なおもちゃです。
そんなおもちゃを使い、いつの間にかWSは始まり、なおみんは参加者と一緒に戯れながら、語りかけていきます。
「どこに住んでるの?」
「どんなものが好き?」
「昨日は何を食べたの?」
一見、何気ない日常的な質問。しかし、仮面を通して答えることで、参加者からは思いがけない言葉が紡ぎ出されていきます。それは、「役作り」という、他のキャラクターや人格になることとは、少し違う。
そう、なおみんは「何かの役」を演じることを求めているのではなく、参加者の内側にある「もうひとりの自分」との「チューニング」を促しているようなのです。
ウォーミングアップで柔らかくなった心に、物理的な仮面と布という装いが加わり、なおみんの優しく、楽しく、だけど計算された問いかけによって、普段は気づかない自分の一面が姿を現す——。
なおみんのチューニングによって現れる、参加者の言動や感情、感情たちは、「自分」でありつつも、まさに「わたしのしらないわたし」のものである、という今回のWSを通しての全体像が見えてきます。
なおみんのこのWSは、そのウォーミングアップも含め、「仮面を被る」という行為の意味と効果を、最大限引き出すような内容であったと思います。
仮面の向こうにいるのは、もう一人の私?
「仮面をつければ、違う誰かになれる」
そう思っている方もいらっしゃるかもしれません。でも、なおみんは静かな声でこう教えてくれました。
「いつもとは違う感情、言葉、態度、行動であっても、それは本来のあなたの中にあるもの。あなたの中にないものは、決して現れません。だからこそ、普段は気づかない心の奥の部分を、そっと探っていく準備が必要なんです」
この言葉が伝えようとしているのは、きっとこういうことだと思います。 「どんな感情も、どんな表情も、確かにあなた自身。そのままのあなたで、十分素晴らしい」と。
私たちは知らず知らずのうちに、社会の中で心に鎧を着せています。このワークショップは、その重たい鎧を一枚ずつ、優しく脱いでいくような体験でした。参加者の表情が徐々に柔らかくなり、自然と「このままの私でいいんだ」という安心感が広がっていくのを感じました。
変化する私たちの姿
仏教の教えでは、変わらない固定的な自分というものは存在せず、すべては絶えず移り変わっているのだそうです。
今回の展示では、仮面をつけ、そこに書かれてある質問に「仮面のあなた」に答えて頂く、という体験型の展示になっています。
物理的な仮面との出会いを通して、普段身につけている「心の仮面」に気づき、それを少しずつ外していく。そんな素敵な体験を、より多くの方々にしていただければと思います。
最後に、ファシリテーターのなおみんから、温かなエールが届いています。
「少し難しい、怖いと感じるかもしれません。でも、大丈夫です。こういうのは楽しんだもん勝ちですよ!」
そう、まさに楽しむことが一番大切なのかもしれません。
みなさまのご来館を、心よりお待ちしております。
展示概要
展示名: わたしのしらない わたしとであう
期 間: 2024年11月1日から11月24日
1つだけ美術館は、ご来館いただいたみなさまからのドネーション(寄付)によって運営されるパブリック美術館です。
なにとぞご協力をお願い申し上げます。
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